試練の日

先日、次男の1歳半検診に行った。
検診の数日前から私は緊張していた。嫌いなのだ。
発達や発育が順調かどうか見ていただけるのはありがたいことだが、
チェックされている、厳しく審査されている気がして、落ち着かないからだ。
子どものことだけでなく、私の母親としての能力や資質を・・・。
気にしすぎと言われればそれまでだけれども。

この日は長男の幼稚園が休みだったので、お願いして長男についてきてもらった。
長男はリュックにぎっしりと絵本をつめて持ってきて、
検診会場に着くともくもくと読み始めた。ありがとう、とても助かるよ!

会場では、1歳半のちいさい子たちがあちこちで泣き叫んでいた。
緊張して固まる次男。
これから身体測定、歯科検診、歯磨き実演、保健士さんとの面談、と
次男にとっては嫌なことがたくさん待ち受けている。
他の子どもたちも、長時間待たされるし、早く帰りたくって泣いているんだろう。



まずは発達検査に呼ばれた。
長机をはさんで保健士さんと向き合う。
「はい、しゅんちゃん、どれがわんわんかな?」と絵を見せてきた。
あいさつもなしで、初対面の人にいきなり指示されて面食らう次男。
「しゅんちゃん、わんわんどれか教えてね。」
次男は私にしがみつき、保健士さんから目をそらして口をへの字に曲げている。
あ、いやなことがあったときにする顔だ・・・。
「あれ?しゅんちゃん、わんわんどれ?教えてちょうだい!」
保健士さん、イライラしてきたようす。
でもこれは保健士さんと次男の関係なので、間に入らずに見ている私。
次男は普段人からこんな支配的に言われることないから嫌なのね。仕方がない。
「じゃあぶっぶーどれかしら?しゅんちゃん!」
意地でも目を合わさないように、保健士さんに背を向けて
全身で「いやだ」と表現する次男。なかなかがんばります。

「じゃあ、先に積み木を積んでもらいましょう。はい、しゅんちゃん、高く積めるかな?」
きれいな色の積み木が出てきて、興味をもった次男。
保健士さんの積んだ積み木の上にそーっと積んだ。
すると、保健士さんが「もっと高く積みましょうね」、と言って
保健士さんが積んでいた積み木を崩して、次男の前に置いた。
次男、えっと、この上に積んでいいのかな?
それともさっきぼくが積んだやつ、崩した方がいいのかな?と迷っているようす。
「はい、高く積んでね。」と保健士さんは言って、次男の前に積み始める。
次男もその上に積み上げた。
「はい、じゃあぶっぶーはどれ?」とまた絵を取り出す保健士さん。
「ぶっぶー」と言う次男。
「しゅんちゃん、わんわんはどれ?」
また顔をそむける次男。

「あー・・・じゃあママに聞いてもらおうかな〜?」
・・・それは私にお願いしているんですか?それなら私に対して話してもらいたいんですが、
と内心陰性感情−3ぐらいになりながらも、
「しゅんすけ、わんわんはどれか教えてくれる?」と次男に尋ねた。
次男は私の顔を見て、絵を見て、また顔をそむけた。
今、バカにしないでよって言われた気がした。
「しゅんすけ、わかってるの知ってるんだけどさ、車はどれか指さしてくれない?」
ちょっとため息をついて、次男は車を指さした。
「はい、じゃあわんわんはどれ?わんわんは?」と保健士さん。
次男はやっと犬の絵を指さした。
「はい、おさかなはどれ?」、「りんごはどれ?」とうながされ、
時間をかけてなんとか指さして、「はい、おくつはどれ?」と聞かれると、
次男は「たった!」と言ってさっき自分のくつを入れた下駄箱を指さした。
「あーはい、まあいいでしょう。」

「どんな言葉をお話しできますか?」
えーっと・・・と詰まってしまった私。
次男とまったく問題なく「会話」しているつもりだったので、
そういえば彼がどんな「言葉」を話しているのかあまり意識していなかった。
私「ぶっぶーとか、わんわん、にゃーにゃ、とか・・・」
保「他にはありませんか?」
私「えーっと・・・トマト」
保「?トマト?」
私「りんごはごーで、小鳥はちゅんちゅん、魚はかーで・・・」
保「魚はかー?」
私「そうです、魚はかーです!」
なぜか陰性感情−4になる私(笑)
保「・・・まあ、3語以上は出てそうですね。2語文はどうですか?」
私「あ、まんま、おいちって、この前言いました。」
保「あ、まんまは言えるんですね。2語文はこれから、と。」
保健士さんの手元の書類には、まんま、とかぶっぶー、とか、幼児語が書いてあって、
しゃべれる言葉に○をつけるようになっていた。
そこにトマトとかちゅんちゅんはなかったので、欄外にメモされていた。

面談が終わってから、次男は
「きゃきゃ(お茶)」とか「(にん)じん」とか「ちーじゅ」、
とか「っぱん」とか、「(ひじ)き!」とか、
もっと多くの食品を言えることも思い出したし、
「だい(す)っき」、「だいじ」とか、「あーとっ(ありがとう)」とか、
心の動きを伴う言葉だって彼は話していることを思い出した。


身体測定と歯科検診の後、かなり長い待ち時間があった。
次男はもうここから逃げたくてたまらないようす。
「あっち、あっち」と、部屋の隅の本棚の近くへ行きたがる。
すると次男は、本棚の後ろ側が非常口になっていて、
その手前に少しスペースがあることに気づいた。
部屋の中の人からは見つからない死角だ。
彼はちょこちょこちょこっと本棚の後ろに隠れて、ほっと一息ついた。
(私は背の低い本棚の上からのぞき込んで一部始終を見ていた)
非常口のガラス戸から外を眺めたり、本棚のすき間から部屋の中の様子を見たり、
ひとりで楽しそうに過ごしている。
ときどき首を突き出して、私が近くにいることを確認する。
ああ次男はほんとうに「安全なところで自由にしたい」人なんだなあと思った。

私と次男がいるべき場所にいないもんだから、
長男は待合の部屋で、次男の名前が呼ばれないかどうか聞きながら
ひとりで本を読んで待っていてくれた。

その後阿鼻叫喚地獄絵図の歯磨き実演も終えて、私と次男はぐったりして帰宅した。


次の日の朝、次男がものすごい泣き声でオムツを換えろ、ご飯ちょうだい、と訴え、
びびる私と夫。
だが様子の変わったところは何もなくて、
前日の検診で子どもたちが泣きわめいていたのを真似しただけだったようだ。
普段の次男は、泣いてうったえたところで、
みんなににこにこと泣き止むのを待たれるだけだから、あまりしつこくは泣かないのだ。
しつこく泣くときは体調の悪いときぐらい。
検診のとき次男は、嫌なことをされているときは泣いていたけど
解放されるとすぐに泣き止んでいた。
確かにずーっと泣いている子とか、泣くことで注目関心を得ようとしている子とか、
いたものね。次男も周りからいろいろ学ぶんだと思った。
だが、相変わらず泣き叫んでも相手にしてもらえない次男は、
その日のうちに大泣きすることをあきらめた。



アドラーの常識は世間の非常識とかいうけれど、
泣いている子にかまって、
子どもに命令口調で指示をして、って、
子どもにとっていいことは何もないような気がした。
長男の方は激しく反抗するタイプで
次男の方はどちらかというと不服従のタイプなのであまり気づかなかったけど、
うちの息子達はどちらも、
競合的な、縦の関係にとっても敏感で
決して意に沿おうとはしないんだということがわかった。
・・・まあ、私もそうなのかもしれないんだけど(^^;;;)

これから学校に行くようになったら苦労するだろう。
でも若いうちの苦労は買ってでもした方がいいと思う私は、
家で彼らを、外で思いっきり戦えるように勇気づけたいと思うのだった。
・・・私も戦い続けるんだろうな。アドラー的でないこの社会と。


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by Inahoadler | 2016-03-21 02:14
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