おつき合いのお作法

私がお風呂を洗っているとき、
洗面所にいた長男が大声で「わあっ!!」と叫んだ。
びっくりして、どうしたの?と聞くと、
「お母さんこれ、大きなムカデの・・・」
「ひゃあっ?!ムカデ?」 
「大きなムカデの、祖先の跡だよ!!」
「・・・ん?」
大興奮の長男が壁を指さしている。
洗面所の壁は塗り壁なのだが、そのコテ跡がムカデの跡に見えたらしい。
「ほら、ここ、動いていった跡だよ!大きいでしょ?
 ムカデの祖先は1mぐらいあったんだって。
 あ、こっちは化石だね、ほら、歯がある!肉食恐竜だ!
 ぼくんち、化石がいっぱいだね!!」

目をキラキラさせて壁にはりつく長男。
彼はほんとうに何もかもを楽しめるんだ。
そして、人は自分の見たいように世界を見ているんだ。



ピアノのノートの宿題をするために、鉛筆とノートを探し始めた長男。
長男「鉛筆ない〜お母さ〜ん」
私 「そう。」
長男「お母さ〜ん」
私 「なあに?言いたいことははっきり言ってね。」
長男「鉛筆、一緒に探してちょうだい。」
私 「いいよ。こうすけの部屋でガムテープの下敷きになってたの見た気がするよ。」
長男「一緒に来てちょうだい。」
私 「はいはい。」

長男は鉛筆を見つけて、ありがとうと言って
鉛筆を握りしめたまま、次男が広げていた絵合わせカードで遊び始めた。
 私、陰性感情−1。せっかく見つけたんだからさっさと宿題しようよ・・・
次男が鉛筆を取ろうとする。
長男がだめっと言ってにらみ、次男が泣き始める。
 あーあ。私、陰性感情−2。
長男、次男を見てにこにこ。私を見て「しゅんすけ、かわいいね(^^)」
私、「うん、かわいいね(^^)」と思わず笑う。陰性感情消える。
いったん泣くのを止めたが、
もうちょっと泣こうかな、と口をへの字に曲げたままの次男に向かって
長男はザクロの絵のカードを見せながら歌い始めた。
♪ざくろ〜ざく〜ろです〜ざ〜くろです〜よ〜ざ〜くろです♪
きゃあきゃあ笑い出す次男。
喜んで歌い続ける長男。立ち上がって踊り出す次男。
兄弟仲良くて何より。
・・・宿題は、長男の課題だから、黙っておこう。
やる気はあるみたいだから私に言えることはない。
と思いつつも陰性感情は−1。
まだまだ競合的な私。

私が次男のお風呂の準備をしていると、
ひとしきり遊んで満足したらしい2人がごきげんでやって来た。
次男をお風呂に入れようとしていると、
長男「ノートがない。」
私 「・・・それは困ったね。」
   陰性感情−2。置く場所決めてたのに、なんでないのよ!
   鉛筆の次はノートか。いつになったら宿題できるの?
長男「ノートどこ〜?」
私 「お母さんは触ってないからわからないわ。どこかにあるはずでしょ。」
長男「え〜どこにもないよ〜」
私 「・・・困ったね。」
長男「探すの手伝って。」
私 「えー・・・もう、絶対この辺にあるって。」
   楽譜やノートを置いている棚を探す私。
長男「そこは見たけどなかった。」
私 「ほんまや。おかしいねえ。あ、あそこにノート落ちてるやん!」
   しかしそのノートは古いものだった。今使っているノートは見つからない。
   私の陰性感情は落ち着いてくる。
   ノートが必要なときにすぐ取り出せないのは、単なる失敗だと気づいたのだろう。
長男「おかしいね〜」
私 「うん、でもどこかにあるよ。お母さんはもうお風呂に行くからね。」
長男「はーい。じゃあぼく明日また探すー。」
   今から読む本を選んでいる長男。
   陰性感情−2。見つかるまでもっと探しなさいよ。
   ・・・競合的なわたくし。
私 「・・・今の間に、もうちょっとノート探してみたら?」
長男「・・・そうですね。明日も探すし、今も探そうっかな。」
   おーい見つからないの前提かーい!
   でも探すことに決めたのは、私への配慮かな。
   きみはいつも私に協力的でいてくれるね。
   そうやってお互いに譲り合って生きていくのがいいね。
   私が競合的でした。ごめん。
私 「・・・見つかったらいいね。じゃあ行ってきます。」
長男「行ってらっしゃい!」

次男をお風呂に入れていると、長男の声が聞こえてきた。
「おーいノートー!出てこーい!」
「どこだー!」
「ノートー!出てこないとはじきとばすぞぉー!」
なんだか楽しそうにしている(笑)
たぶん叫びながらうろついているだけだろうけど、
長男の苦手な探しものを、楽しもうとしているのってすごい。
ノートは明日のレッスンまでに見つかればいいんだし、
見つからなければ見つからないで、何とか自分でしてもらうしかないし、
そこから色々と学んでくれることだろう。
ノートがどこにあるのかかなり気にはなるけれど、
私は明日、物でいっぱいの机の上を片付けよう。

すっかり落ち着いてお風呂から出てきた私に、
長男は「見つからなかったから、明日また探すね。」と言った。
私の好みの「探す」ではなかったけど、
長男は「探す」ポーズだけはとってくれた。
これは、私とうまくつき合うために彼が考えた工夫なんだと思う。
「そっか。明日見つかったらいいね。」と返事したときの私は、
さっきよりも長男とよい関係になれたような気がして、
とても嬉しい気持ちだった。
私も、彼とのおつき合いのお作法を学んでいる最中だが、
彼の方がずっと上手だな(^^;)



[PR]
by Inahoadler | 2016-03-17 22:59
<< 勇気づけ 1歳児の推理力 >>