男の世界と女の世界

活発な男の子である長男は、秋のある日
「男の子たちは群れをつくって、戦うんだよ。
 それでね、勝ったら女の子がもらえるんだよ」
と言った。
勝者は女の子がもらえる?!それはどうなんだと驚いた(というか腹が立った)
私は彼の話を聞いてみた。
私 「女の子がもらえるって、どういうこと?」
長男「あのね、戦いは、メスをめぐって戦うんだよ。
   だから勝った男の子は、女の子がもらえるの。」
私 「へえ・・・!カブトムシとかクワガタムシみたいなんだね・・・」
長男「そうだよ、ドラゴンごっこだからね。男の子たちはどかーんって戦うんだ!」
よかった、人間の世界の、勝者に女の子がなびくとか賞になるとかいうんじゃなくて、
メスをめぐる生物的なオスどうしの戦いの設定だったらしい。
(どっちにしても同じことではあるんだろうけど・・・私の陰性感情は消えた。)
彼の遊びの世界は現実から離れているわけではなくて、
自然界の法則に則っているらしい。
ドラゴンだけど(笑)


また冬のある日
長男「ぼく、Kちゃんをつけねらってたんだよ。
   それからしのびよっておそいいかかって秘密基地に連れ去ったんだ〜♪」
なかなかに物騒な単語が出てくるのでびっくりした私。
私 「え、Kちゃんは怖がったりしないの?」
長男「んー、怖がってはないと思います。
   Kちゃんは竹馬に乗ってて、ぼくはにらみつけてそ〜っとしのびよってたから、
   気づいてなかったかも。」
私 「へえ、そうなんだ・・・」
長男「それでね、笑って秘密基地についてきてくれたよ!」
私 「そうなんだ、Kちゃんが笑ってついてきてくれてよかったね。」
長男「うん、男の子達は肉食恐竜でね、女の子は草食恐竜だからつかまえてくるんだ。
   AちゃんとかMちゃんもつかまえたよ♪」
よくわからないけれど、長男のお仲間の恐竜男子たちとも
仲良くしてくれる女の子たちがいるようでよかった。


先日は、長男の服にべったりと灰色の絵の具がついていた。
私 「腕についてるのって絵の具?今日は何したの?」
長男「あ、絵の具ついちゃったみたい。あのね、今日は岩山つくったんだよ!」
私 「岩山?」
長男「うん、恐竜発掘の岩山だよ!」
私 「わあ、すごいね、みんなで作ってるの?」
長男「うん、AくんとかSくんとかTくんとかSちゃんとかと作ってるんだ♪
   ぼくが発掘現場の地図を作って、Aくんが発掘隊長で、
   みんなでハンマーとかでげいーん!って化石発掘するんだよ!」
私 「おおお〜すごい!いいねえ!」
どうやら彼の恐竜遊びが発展して、お友だちも交えて、
幼稚園の活動として採用されたようで、
園の保護者参観に合わせて準備をしているようだ。


保護者参観では、
オシャレグッズのお店屋さん、紙飛行機飛ばし場、お家の中のおままごとごっこ、化石発掘
の4つの遊びコーナーを子ども達が独自に考えて作って、
みんなで各コーナーを回って遊ぶというものだった。
子ども達が一生懸命に考えたり遊んだりしているのがわかり、
こんなに成長したんだなあと嬉しかった。

長男たちの化石発掘コーナーは、
恐竜や化石に対する考え方が子どもによって大きく異なったようで、
ジュラシックパークの影響で恐竜が好きになった子たちはサファリバス的な車を、
恐竜自体に興味がある子たちは恐竜を、
化石の発掘に興味がある子(多分長男)は発掘現場と発掘道具を、
というアイディアを出し合い、それらすべてを採用したようだった。
それで、段ボールで作った大きな(電車ごっこのような)保護色の車に乗って、
途中でティラノサウルスの親子をながめつつ(?)、
発掘現場に行って、ハンマーやドリルで化石を発掘する、
というコンセプトになったようだったが
他の保護者の方にはこの複雑なコンセプトを理解するのが難しそうだった(笑)

長男がお手製の「ドリルハンマー」で、
段ボールで作った岩山をガッツンガッツン叩きまくっているのを見たあるお母さんが
「・・・あの、けっこう激しいんですね」と驚いていらっしゃった。
「あ、あれは化石を発掘しているところらしいです(^^;)」と私が説明すると、
「そうなんですよ、化石掘り出すから力一杯なんです(笑)
 ちゃんと化石も作って、あの岩山の中に隠しているんですよ〜♪」と
先生も楽しそうに説明をしてくださった。
そのお母さん「はあ、化石を・・・」とまた驚いていらっしゃった。
そうですよね、化石発掘のコーナーの子ども達は、自分たちが遊ぶのに夢中で、
まったく遊び方とか設定の説明とかしていなくて、
さあみんな一緒に遊ぼう!とばかりに動き回っているばかりだったから・・・。
でもみんなほんとに楽しそうで、その世界に入り込んでいて、
いい子ども時代を過ごしているなあと私は思った。

他のコーナーの子ども達(特に女の子たち)は、
一応、ここでこうします、という説明をしたり、ルールがわかりやすいように工夫していた。
オシャレグッズのお店に遊びに行く順番が来ると、長男はすぐに開店を待つ列に並んだ。
ここではお店の女の子たちの手作りの
かわいい指輪とかネックレスとかブレスレットとかを売っていて、
待ちきれないお客さんの女の子たちが次々に長男を抜かしていく。
長男は大人しく抜かされて、黙って順番を待っていた。
さっきまで「それえーい!いくぞーーー!!」って叫んで
ハンマー振りかざして走り回っていた君はどこへ?!
やっとのことで指輪をゲットした瞬間、私のところへ走ってきて、
「お母さん!プレゼント!」と言って私の指に指輪をはめてくれた。
そうか、私のために並んでくれていたんだね、ありがとう。
私のことを女の子とみなしてくれていて、大変驚いた。
そして彼はプレゼントをゲットするためには、
女の子のルールに従わなくてはいけないこともきちんと知っているんだ。



男と女について、私が幼稚園年長のときの早期回想がある。
長男の男と女についての考えに関心をもっていたら、先ほど急に思い出した。

人形劇の「シンドバッドの冒険」を園で見に行く行事があった。
とってもおもしろくて、興奮した私は、後ろの席にいる仲良しのSちゃんに
「ロマンチックだねえ!」と感想を言った。
次の日の朝幼稚園に行くと、Sちゃんの隣の席で観劇していたYくんが
「おまえ、昨日シンドバッド見て『ロマンチックだね』って言ったやろ〜」
と笑いながら言ってきた。
私は恥ずかしくなって、あんなこと言わなければ良かったと思って、
「言ってないもん!」と言った。
Yくん「言ってたって!だってシンドバッドにお姫様が助けられて、
    おまえもお姫様になりたいって思ったんやろ?」
(今思うと、Yくんの方が「ロマンチック」という言葉の解釈が正しかったのだけど、
 私は、「わくわくしてめっちゃおもしろいね!」という意味で「ロマンチック」と言った。
 それにお姫様に感情移入していたのではなかったので、Yくんの台詞は心外でびっくりした。)
私 「え、私お姫様なんかなりたくないもん!」
Yくん「嘘つき!ぜったいお姫様になりたいって思ってるやろ!」
私 「思ってへん!だって私シンドバッドになりたいんやもん!」
Yくん「はあ?嘘やで!女の子はみんなお姫様になりたいもんやで。Mもそう言ってたで!」
私 「でもお姫様なんかなりたくないもん。」
Yくん「へえ〜じゃあおまえシンドバッドになってみろよ!
    おれあのお姫様さらったやつになったるから!おれのこと倒せへんやろ?」
私 「倒せるわ!」
Yくん「じゃあやってみろよ!シンドバッド!」
それから私とYくんはつかみ合いの取っ組み合いをして、私が床に倒れた。
Yくんは「ほらな、女は男には勝てへんねん」と言って、去って行った。
私はとても悔しかった。
でも、シンドバッドにはなれなくてもお姫様にはなりたくないって思った。

わあ、この早期回想は今の私をそのまま表している・・・
あまりに話が長くなりそうなので今は深くは立ち入らないことにするけれど、
とにかく、私は「女は男に助けられなければ生きられない弱いもの」という
男女観が一般的らしいが、私はそうは思えないと、突っ張ってきたところがある。
私はふつうの女の子じゃないんだって、良くも悪くも感じながら生きてきた。
こんな私が、結婚をして子どもを産み、
母になれたんだなと思うと、とても感慨深い。
そして、おそらくどうしてもわかりあえない異質な男という性の子どもたちと
共に暮らすようになったこの巡り合わせを、嬉しくも不思議に思うのだ。

このような思いがあるから、私は長男の男女観について、
ときに陰性感情を抱くこともある。
男と女はどこまで違うんだろう?


さて、つい先日、
「もし泥棒が来たらね、ぼくは、男の子仲間たちを集めて、
 武器を持って戦うんだ!
 女の子たちは、群れの真ん中に囲んで、守るんだ!」
と長男は言った。
彼にとって男の子とは、群れで一致団結して動く自分の仲間たちで、
女の子とは、かわいらしいものが好きで、男の子より体力的には弱い守るべき存在で、
でも一緒に過ごすためには、彼女たちの独自のルールを守らないと怖い存在、
そんな風に定義されているようだ。
長男が、男と女は、違っていても協力しあう人たちなんだと
そう思っているとわかって嬉しかった。



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by Inahoadler | 2016-03-02 22:39
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