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不買運動

長男はなかなかに意志が強い。
それは彼のとてもよいところだけど、気をつけてお付き合いしないと
私に反対するぞと心を決められると、どこまでも悪い子でいることを選ぶので
なかなかな事件が勃発する。


先日、ミニカーの電動式道路で遊びたいと長男が言った。
そのセットはロフトに置いていて、ハシゴをかけないと取れないのだけど
ハシゴは重くてお父さんに手伝ってもらわなければかけられない。
そう説明してあきらめてもらおうとすると、
長男は「じゃあぼくがハシゴかけるの手伝うよ!」と言った。
残念ながら長男の力ではかけられないので、明日の朝お父さんにお願いしようと言うと、
長男「いやだ!ぼくは今日大鉄橋セットで遊びたいんだ!」
私 「でも出せないよ。ごめんね。」
長男「いやだ!絶対に遊ぶ!」
こうなってしまっては仕方がないので、私は黙って毛布に掃除機をかけ続けた。

長男は本棚から絵本を次々に引っ張り出して、床にばらまき始めた。
陰性感情がかなり出る私。
長男は私の顔を見ながら、次男用の小さなすべり台から次々に絵本をすべらせる。
すべり落ちた絵本は、私が掃除している毛布の上にどんどん積み上がる。
・・・見事な邪魔だ。
私 「本は大事にしてください。」
長男「大事にしてるよー」
私 「すべり台すべらすのは大事にしてるとは思えないよ」
私をにらむ長男。(そして私もにらみ返した・・・)
私は黙って毛布を置いたまま、部屋から出た。

残された長男が子ども部屋の中でどたんばたんと暴れている音が聞こえる。
私は大事な布団掃除機を荒れ狂う長男から守るために
他の部屋の高い棚の上にしまい、
ノートパソコンを抱えて1階に降りて、トイレの中に閉じこもった。
次男はトイレのすぐ近くのベビーベッドの中で大人しく遊んでいる。
私は、長男が落ち着いて話できるようになるまで、黙って閉じこもることに決めた。
そして時間つぶしにブログを書き始めた。
(このとき書いたのが「うちのピエール」だ)

長男は私の気配が消えたことに気づいたのか、子ども部屋を荒らすのをやめて
どんどんと階段を踏み鳴らしながら降りてきて、
トイレのドアをがんがん蹴りはじめた。
力が強くなってきているので割れるかもしれないが、
ここはがんばって黙っておくことにした。
だって「やめなさい」とか「そうやって蹴っているとどうなる?」とか言っても、
相手が感情的になっているときは何の効果もありませんからね。
どうせ彼は「蹴る!」とか「壊れても蹴る!」とか言って、
私の陰性感情をよけいに引き出そうとするだけなのだから。

売られたケンカを買わない。
これがこんなに忍耐を必要とするなんてはじめて知った。
ということは、今まで私は子どもに売られたケンカをすっかりお買い上げしていたのだな・・・
うまくいかないときの私と長男は、権力闘争をしていたのだ。

長男は食卓のイスをばたんばたんとなぎ倒しているようだ。
荒れ狂う長男におびえたのか、泣き始める次男。
それに応えて叫び始める長男。ベビーベッドをがたがた揺する音も聞こえる。
だけどここが峠だろうと信じて、黙って「うちのピエール」を書き続けた。
ピエールはライオンに食べられても「ぼくしらない!」って言っていたけど、
たぶん彼もそれぐらいの粘り強さがあると思う。
ならば、対峙する私も彼を上回る根気強さで、
彼の不適切な行動に注目関心を向けないようにしなければならない。
これは勝ち負けのゲームじゃない。
早く彼に、このゲームが無意味であることをわかってもらって、
お互いに仲良く過ごせるような関係を回復させたい。

時折長男はトイレのドアを蹴りに来て、また別の場所を蹴りに行く。
もう40分ほどたった。
すると彼は、トイレのドアの鍵を外側から開けようとしはじめた。
・・・賢いもんですね。
でもここで開けられては困る(私に暴力をふるうだろうし)ので、
必死で鍵を内側から押さえた。
だんだん滑稽に思えてきた私。
陰性感情はずいぶんと小さくなっている。

鍵が開かなくてまた怒りがこみ上げてきたのか、
今まで以上にがんがんとトイレのドアを蹴る長男。
そして激しく泣く次男。
・・・いつまで続くのかと思ったそのとき、
「お母さん、出てきて。」と長男が言った。
話してくれた、嬉しいなと思った。
「うん、お母さんも出たいけど、落ち着いた?」
「落ち着いた。」
「そう、じゃあむちゃくちゃになったお部屋、お片付けしてくれるかな?」
「うんいいよ!」
「ありがとう〜」

パソコンを抱えてトイレから出ると、長男は既に子ども部屋の片付けに行っていた。
ベビーベッドの中から、次男がにこにこ手をふってくれた。
はあ・・・。
1時間の籠城から帰還すると、
食卓の周りはイスがすべて倒れ、
絵本が散らばり、次男のおもちゃが散乱し、タオルも散らばっていた。
おそらく2階もすごい惨状だろう。

しばらくすると長男が降りてきて、「お母さん、ぼくお母さんが出てきてくれてよかった!」
とかわいいことを言ってくれた。
家が酷い状況になったのは嫌だけれど、
長男と仲良くできるならばその方が大事なことだなと思った。
「こうすけが落ち着いてくれてよかった。お片付けは、自分でできる?」
「うん、自分でできるよ!ぼくそれはちゃんとわかっていますから。」


長男は自分で悪いことをしようと決めて、悪いことを止めようと決めた。
そして、自分で片付けをしてくれた。
それはとても嬉しいことだった。
私が一言も言わなくても、彼はきちんと自分で考えて適切な行動をしてくれたから。
トイレに閉じこもっている間、私は不安になった。
彼が暴力的な人になるんじゃないかとか、
これからも気にくわないことがある度に暴れるんじゃないかとか、
次男まで暴力をつかうことを覚えたら、この家壊れちゃうんじゃないかとか・・・。
でも、暴力的に振る舞っている限り、私が彼と向き合わないとわかってくれたら、
少なくとも私との間では、彼は別のやり方を試してくれるはずだ。
彼の暴力性に注目していては、このやり方が続いてしまう。

そういえば彼は若干2歳の頃、
当時住んでいた古い家で、ベビーチェアをなぎ倒し、
ふすまを蹴り外して、ベビーチェアの上に倒して大きな穴を開け、
茶筒を床に投げつけて辺りをお茶っ葉の海にし、
リモコンを投げて電池カバーを割り・・・
いろいろやらかしていた。
お米の袋を台にして、スプーンとフォークの入った引き出しを開けて、
すべてを一本一本ていねいに舐めてはもう一度引き出しにしまったこともあった。
あれは当時の彼が考えつく限りの悪いことだったのだろう。
彼は何が悪いことなのか十分にわかっている。
悪いことをしようと決めているのだ。

目標は、彼が悪いことで注目関心を得なくてもいいような関係を築くこと。
そのためには?
適切な行動にいつも正の注目を!
子ども部屋のドアが、長男が蹴りすぎて外れていたけど
そのドアを見てもう一度怒りを作り出すことに有効性はない。
そうそう、私は2歳の暴力的なエネルギーのあり余る長男との関係を改善したいと思って、
パセージを受けたのだった。
パセージを学んだ今私は、幸いなことに「私が」どうすればいいのか知っている。
あとは実践あるのみだ。

by Inahoadler | 2015-12-15 16:23
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