貴重な時間

次男は活発で、まったく目が離せない。
もう少しで一人歩きをしそうという状態を忘れるほどに
素早く移動し、背伸びをして棚の物を引っ張り出し散乱させ、
また移動してはおもちゃ箱をひっくり返し、
隙あらば階段を昇ったり、窓の鍵を開けたりするので
私が落ち着いて家事や用事ができるのは、
彼がご機嫌でベビーチェアに座っているときか寝ているときだけだ。
(ベビーベッドはよじ登って脱走するようになってしまった・・・)


ある日、午前中によく遊び、午後になっていい感じに次男がうとうとしてきた。
しかし長男がいると次男は嬉しくてなかなか寝ようとしない。
眠たいのに寝たくなくて機嫌が悪くなり、
次男はぐずぐずと泣き出した。
早く寝かして用事をしたいと思って、授乳することにした。
飲みながら、すぐに次男は眠りに落ちた。
長男は1人で絵本を読んでいる。
「お母さんちょっと用事してくるから、それが終わったら一緒に本読もうね」
と言うと、長男は快くわかった、と返事してくれた。

私は静かに食器を洗ったりお米を研いだりして、
さてパソコンの用事を片付けようと机に向かうと、
長男が次男の寝ている部屋にぱたぱたと走っていく音が聞こえた。
次男を起こしちゃわないかなと、少し陰性感情が生まれた。
聞き耳を立てていると、長男の嬉しそうな笑い声がする。
すると、「あれ?しゅんすけ、起きたんだ、おはようしゅんすけ!」という長男の大きな声が聞こえた。
せっかくこれから用事をしようと思っていたのに、
長男のせいでできなくなったと、私はいらいらした。
しばらくは長男と次男が楽しそうに笑っている声がしていたが、
とうとう次男が泣き出した。

長男「お母さーん、しゅんすけ起きましたー!泣いてまーす!」
  泣いてますじゃなくて、あなたが泣かせたんでしょと陰性感情が大きくなった。
私 「はい、わかってます。」
   努めて陰性感情を抑えようとはするが、抑えきれていない。
長男「あ、お母さんのところに向かっています!」
   次男は泣きながら私のいる部屋にハイハイしてきた。
私 「もう・・・寝てたのに、なんで起きちゃったんだろうね?」
   長男を責める言い方をしてしまった。
長男「なんでだろうねえ?」
   悪びれない長男に対して、余計に陰性感情を抱く私。
私 「・・・こうすけ、さっきしゅんすけの部屋に行ったよね。
   それでその後しゅんすけが起きたでしょ。」
長男「・・・うん。」
私 「それ、こうすけが起こしちゃったってことじゃないの?」
長男「・・・ちがうと思うよ。」
私 「ほんと?しゅんすけを触ったりはしなかった?」
長男「触ってないよ。」
  目をそらす長男。私は彼を責めてしまった。
  とりあえずこのやり取りは打ち切らなければ。そして後で挽回をしなければ。
私 「そう・・・」

私は次男を抱っこして次男の寝る部屋に行った。
長男はついて来ない。
長男を責めてしまって悪かったなと反省した。
多分長男は、寝ている次男をかわいいと思って、近くに寄って見たんだろう。
隣に寝転んで、体が当たってしまったのかもしれない。
それで次男は起きてしまったんだろうけど、
でもそれは長男の不適切な行動ではなくて失敗だし、
その場面を想像すると、私はものすごく幸せな気持ちになった。

泣き続ける次男を優しくとんとんしながら寝かせようとしていると、
しばらくして長男が来た。
ベッドの足元の方で寝ようとするので、
私はおいでと言って、次男と反対側の私の隣に寝てもらった。
片手で次男、もう片手で長男の頭をなぜながら私は言った。
私 「ねえこうすけ、しゅんすけかわいいよね。
   こうすけは、しゅんすけの寝てるところを見たくなってさっきお部屋に行ったのかな?」
長男「そうだよ〜」
私 「そっか。それでかわいくて、笑っちゃったの?」
長男「うん。なんで知ってるの?」
私 「笑い声聞こえてたから(笑)」
長男「えー?」
私 「それでしゅんすけ起きちゃったんだね、仕方ないね。」
長男「うん、起きちゃった。」
私 「そっか。お母さん、しゅんすけが寝てる間にいろいろやりたいことがあって、
   それでしゅんすけを起こしたでしょってこうすけを怒っちゃってごめんね。」
長男「うん、いいよ。」
寛容な長男は私と仲直りをしてくれた。
次男は相変わらず泣いている。
そこで、再び次男を寝かせることはあきらめて、
私は長男に絵本を読むことにした。
読んでいるうちに泣き止んだ次男も一緒に絵本を見に来て、
3人で楽しく絵本を読んだ。


私のすべきことやしたいことはたくさんあるけれど、
一番大切なことは、家族と仲良く過ごすことにちがいない。
多少片付けができなくても、多少ご飯の時間が前後しても、
ましてや私の個人的な用事ならば、
それらは後回しにして、子どもたちに向き合ってあげたいと思えた。
だって、この子たちが子どもでいる時間は限られていて、
私がこうして両腕に子どもたちを抱えていられる時間は本当にわずかなのだから。
今、子どもたちは私に向き合ってくれている。私と仲間でいてくれる。
そのことがほんとうにありがたいと思った。

子どもたちがお互いに仲良くしてくれること、
これに勝る喜びなんてないと思う。
私はいつも彼らの喜びを分かち合える。
いつも彼らに正の注目をしていれば、どんなときでも分かち合えるのだ。
その喜びの大きさに比べれば、
私の思い通りに物事が進むことなんて、多分とても小さくてつまらないことだ。




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by Inahoadler | 2015-11-09 11:10
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