総合芸術

息子はピアノを習い始めて3ヶ月になる。
かなり小さい頃から一緒にオーケストラの演奏会のテレビを見たり、
クラシックのCDを聞いたり、バレエの映像を見たりして、
音楽を聞くことは好きだった。
最近はピアノ教室の先生の発表会やコンクールを聞きに行くことが増え、
音楽は様々なものごとを表現できるのだとわかってきたようだ。


ある日息子が突然
「お母さん、これは、『ターガニはアカシア』という曲です。お聞きください」
と言ってピアノを弾き始めた。
彼の初めての作曲である。(いつも練習しているドとレだけを使った曲に似ているけれど)
私 「なになに?アカシアって?」
息子「アカシアっていうのは、木だよ。」
私 「ターガニはなあに?」
息子「ターガニは、そのアカシアの木のお名前。」
私 「へえー面白い!そのターガニの曲なの?いい曲!」
息子「へへへ・・・じゃあ次は、『アノマロカリスとなかまたち』!」
   息子は得意そうに、たくさんの鍵盤を使って躍動感のある音楽を奏でた。
私 「すごーい!曲だ!アノマロカリスのなかまたちってどんなのなの?」
息子「え?アノマロカリス類の、他の種類の生き物が色々いるんだよ。
   そういう生き物たちの曲。」
   彼の恐竜ブームはまだまだ加熱を続けており、最近は古生代にも守備範囲が拡がった。
   (あ アノマロカリス
    い イクチオステガ
    う うみさそり
    え エダフォサウルス
    お オパビニア   
    という「古生代生物あいうえお」を完成させたとき、
    彼は喜びに打ち震えしばらく寝られなかった。)
   彼の脳裏には古生代の海中をアノマロカリス類が泳いでいるのが見えているのだろう。

私 「いいなあ〜アノマロカリスたちが泳いでるんだね・・・」
息子「じゃあねえ、次は、『ヒョウのおかあさん』」
   今度はゆっくりとした穏やかな曲だ。
   私は風呂掃除をしながらなのであまりよくは聞こえないけれど、
   主旋律を繰り返そうとしている様子はわかる。
   けっこう長く、3分ほど弾いている。
息子「どうだった?」
私 「う〜ん・・・ヒョウのおかあさんが子どもを思う優しい気持ちが感じられますねえ〜」
   適当に答えてみた。
息子「わーほんと?じゃあ次は、こんなの!聞いて!」
  思わぬ勇気づけになったようで、息子は目を輝かせてピアノに向かった。
  今度はかなり激しい。鍵盤をこぶしで叩いている。
  これはもしかすると、先日ピアノの先生が弾かれたプロコフィエフのピアノソナタ第6番の激しい箇所を真似ているのではないだろうか・・・?
私 「すごい!これ、先生がこないだ弾いた曲の感じみたい。激しいね〜」
息子「これは、『ティラノサウルスは最大で最強の恐竜』!」
私 「ああーなるほど!」
息子「すごいでしょ!次はね、『ティラノサウルスとトリケラトプスの戦い』です」

と、このように続々と息子は作曲を続けて、
とうとう組曲『ティラノサウルスの時代』ができあがった。

第1楽章 水辺のパラサウロロフスたち
第2楽章 シロアリの巣を襲うアルバレッツサウルス
第3楽章 ティラノサウルスは最大で最強の恐竜
第4楽章 ティラノサウルスとトリケラトプスの戦い
第5楽章 ティラノサウルスの絶滅

息子は喜びのあまり跳ね回って、そのうちにティラノサウルスの格好で跳ねて、
ふと「あ、これ、バレエだ!」と叫んだ。
こうしてバレエ組曲『ティラノサウルスの時代』ができた。
そして「お母さん、シロアリになって!」と言われ、
シロアリの私はアルバレッツサウルスの息子に食べられたり、
しゅんすけがトリケラトプスになってティラノサウルスこうすけに食べられたり、
ステゴサウルスこうすけが這い回ったり、
火山が噴火する中をティラノサウルスこうすけが逃げ回ったり、
ピアノを弾く人がいなくなってしまったけれども彼の中で音楽は鳴り響いているのか、
こうすけはいつまでも激しく踊り続けるのだった。

私 「こうすけ・・・そろそろ夜ご飯、食べよう・・・」
息子「うん、ちょっと待って!もうすぐ火山が噴火し終わるから!
   あ、ご飯終わったら衣装作らなきゃ!」


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by Inahoadler | 2015-11-02 11:03
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