よきフォロワー

長男のピアノの宿題は、私と一緒に連弾する曲が何曲かある。
たいていは夜ご飯を食べ終わってすぐに練習していて、
このときは次男がたいへん活発な時間である。
私が低い方の鍵盤で伴奏をひいて、長男が高い方で旋律をひくのだけど、
毎日おにいちゃんが楽しくピアノをひいているから
次男もピアノを触りたくてたまらない。
ある日は私にだっこをせがんで、私のひざの上で次男もひいたり、
ある日は長男の横の高い高い音を背伸びしてひいたり。
私 「こうすけは、しゅんすけがピアノの邪魔しても上手にひけるし、
   全然怒らないんだね。やさしいね〜」
長男「ううん、しゅんすけは邪魔してるんじゃないよ。
   いろんな伴奏をしてくれてるんだよ。」
そうか、おにいちゃんが伴奏だと思ってくれているから、
しゅんすけも楽しくひけるんだね。

ピアノの宿題には、おんがくノートもある。
音符を書いたり、書いてあるリズムを手拍子したりする宿題で、
クリエイターな長男は、興に乗ってティラノサウルスを書いたりト音記号を練習したり
たくさんたくさん書いたのですぐに1冊目のノートが終わってしまった。
次男はおにいちゃんがノートに何か書いているのが気になって、
自分も書いてみたくてたまらない。
新しいおんがくノートには表紙に次男の好きなうさぎの絵が描いてあって、
クーピーでおえかきをしてみたいのだけど、いつもおにいちゃんに「ダメ」と言われてしまう。
ある日、長男が古い方のノートを「こっちならいいよ」と言って次男に渡すと、
次男はたいへん喜んだ。
それからは子ども用の座ってひける小さなピアノに向かって、もらったノートを広げて、
何かを熱心にかくようになった。
長男は「しゅんすけはおりこうさんだね〜」と満足気。
だって次男はおにいちゃんの真似がしたくてたまらないんだものね。
おにいちゃん冥利に尽きるよね。


長男が木星やら土星やら天体の絵を描いて、描き終わって置いていると
そこに次男が上からぐちゃぐちゃと描き加えていた。
私 「あ、しゅんすけがグチャグチャ描いてるよ!」
長男「え?・・・あ、これはしゅんすけが、彗星とか小惑星描いてくれたんだよ。
   木星に隕石が衝突したところだよ。」
あなたのポジティブな発想力には頭が下がります・・・!
   

恐竜大好きな長男がいろいろな恐竜の図鑑や絵本を読んでいるので、
次男もよく恐竜の図鑑を広げて研究をしている。
次男はパンも好きで、『からすのパンやさん』のパンがたくさん描いてあるページがお気に入りだ。
ある日、「きょうりゅうパン」を発見した次男は「ばっばっうー!!」と叫んだ。
そしてはっと顔をあげて、本棚に恐竜図鑑を取りに急ぎ、
図鑑をがばっと広げて
「これ!ばっばっうー!!」とトリケラトプスを指さした。
ページをめくって「これ!ばっばっうー!!」とまた別の恐竜を指さし、
次々と「これ!ばっばっうー!!」と大興奮で指さしては叫んだ。
なにごとかと長男もやってきて、にこにこと図鑑をのぞきこむ。
しばらくして次男は「きょうりゅうパン」によく似たブラキオサウルスのなかまの恐竜を見つけ
「おお!これ!ばっばっうー!!!!」とたいへん大きな声で叫んだ。
「ほんとだね!ばっばっうーだね!」と長男と私も喜んだ。
次男も大喜び。
長男は「ちがうよこれは〜サウルスだよ」って、この頃は言わなくなった。
正しいことよりも、喜びをわかち合うことに価値を見いだしてくれたのだろうか。
そうだとすればほんとうにうれしいなあと思った。


恐竜も大好きなのだけど、長男は今生きている生き物も大好き。
進級のお祝いに昆虫図鑑を買ってほしいとお願いされていたので、
春休みのある日、DVDつきの恐竜図鑑と同じシリーズの昆虫図鑑をプレゼントした。
毎日のように昆虫のDVDを鑑賞しては、折り紙や段ボールでマニアックな昆虫を作っている。
反射する材質のお菓子箱を使って、パプアニューギニアキンイロクワガタを作ったり、
コーカサスオオカブトムシを作ったり、
蟻地獄とアリ、とか、キノハダキリギリスとかタガメとか・・・。
なかなかに愛がこもっている。
(工作が増えて居住スペースがどんどん狭まっているのがただいまの我が家の問題ではあるが
 その話はまた別の機会にしよう。)
そのバイブル的昆虫図鑑も、もちろん次男の興味の的だ。
おにいちゃんが見ていないときをねらって、けっこう荒っぽくページをめくる。
それを見つけた長男が次男のところへかけよった。
長男「しゅんすけ、ひとつお願いがあるんです!あのね、これはおにいちゃんの大事な図鑑なの。」
おお、パセージ的に話している・・・。次男は神妙な顔で長男を見上げる。
長男「だからね、逆さまから読まないでちょうだい!・・・ね、これでいいよ。」
本の向きを変えて、長男は満足して工作現場に戻って行った。
次男はまた熱心に図鑑をめくった。
・・・私的感覚はほんとうに人それぞれなんだなあと、私は笑いを押し殺して見守っていた。



長男の関心に関心をもってくれる次男は、
ほんとによく長男を勇気づけているんだろうなと感じた。
そして、リーダーシップを遺憾なく発揮できる次男がいて、
長男はよきリーダーになっていっている気がする。
次男がこれからどういう風に成長していくのかもひじょうに興味深い。


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# by Inahoadler | 2016-04-12 01:37 | Comments(2)

ある日の食卓

1人で食べたいけれどもまだ思うようにスプーンを使えない次男は
右手にスプーンを持って、左手で手づかみで何でも食べようとする。
「スプーンで食べてちょうだいね。」
「うぷー(スプーン)」と言ってスプーンを持ち上げて、これでしょ?と微笑む次男。
「そうそう、そのスプーンで食べれるかな?」
「こうこう」スプーンでご飯をすくって、すくったご飯を左手でつかんで食べる。
私の言っていることはきちんと伝わっているようだ。
でも今は左手で食べる方が食べやすいのだろう。
こうやって段々とスプーンを使うことに慣れていってもらうしかない。


壬生菜のお漬け物に入っているトウガラシが気になる長男。
「ぼくトウガラシどんな味か気になるな〜。ぼくもう5歳だし、もう食べれるようになったかも。」
「じゃあトウガラシ、ちょっと舐めてみる?」
「いいの?うん、ちょっとだけ舐めてみる!」
「辛くて痛いと思うから、ちょっとだよ〜。」
そーっと舐めてみて、びくっと舌をひっこめてあわてて水を飲む長男。
「・・・」
「どうだった?」
「痛ってなった!トウガラシは痛いね、やめとく。おいしくないね。」
「ね、食べない方がいいでしょう。でも、お漬け物にひとかけらトウガラシが入っているから、
 このお漬け物ぴりっとしておいしいでしょ?」
「このぴりっとしておいしいのは、トウガラシのおかげなの?
 すごいね、トウガラシってすごい能力があるんだね!」
そうか辛いっていうのは能力だったんだ・・・!


たくさん入っているままお味噌汁を飲み干そうとした次男が、
上を向いた顔に上からお椀をガバッとかぶって、
呆然としている。
「お皿は上向けたまま飲んだ方がいいね。」
神妙にうなずいて、空のお皿を上に向けて食卓に置いた次男。
「しゅんすけおりこうさんだね〜」と言う長男。
次男の服もイスもべちゃべちゃだが、
この時期は家や服が汚れるのも仕方ないと思えるようになった。
どうせ掃除するのは同じだから、
陰性感情を作るという無駄なエネルギーを使わない方が疲れない。


床をふいていると、
「見て!サツマイモスペースシャトル!」
長男は焼き芋の皮をところどころむいて、ロケットを作っていた。
「うわあ、ほんとにロケットに見えるね・・・」
「ここが窓で、ここが燃えてるところだよ♪ぼく何でも作れるんだ!」
「・・・サツマイモでも何でも作れちゃうんだね。」
お行儀よく食べてほしいんだけど、楽しそうだしどうしようかと思っていると、
「・・・でも食べ物で遊んじゃだめですね。」
と言って長男は食べ始めた。
「うんそうだね。でもさっきのほんとにロケットみたいだったね。」
「うん、とがってたからね!」


とろろ昆布をお箸でつまんで顔の上から垂らして、釣られた魚のようにして長男が食べている。
「それ、お行儀いいと思う?」
「うーんわからない。」
「じゃあ、お母さんが幼稚園で一緒にお給食食べるときに、
 そうやってあーんってとろろ昆布食べてたらどう?」
「嫌だ(笑)」
「そうだよね、じゃあそれはお行儀よくないってことだね。」
「あーそうか!」



次男はこれから1人で上手に食べられるようになるための練習中。
長男はお行儀よく食べられるようになるため、試行錯誤中。
私が陰性感情を使ってうるさく言わないで、
楽しく上手に食べられるように、一緒に練習できたらいいなと思う。
彼らは、不適切な行動をしようと思ってしているんじゃない。
適切な行動を知らないか、適切な行動がまだできないだけで、
成長と共にこの不適切な行動は消えていくだろう。
面倒くさいといえば面倒くさいけれど、
こうやって食事の仕方が話題にできる時間なんて、きっとごく短い。
日々の今の小さな困りごとが、懐かしい思い出になってしまう前に、
今の子どもたちの関心にもっと関心をもちたいなと思う。


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# by Inahoadler | 2016-03-31 00:28 | Comments(0)

構えを変えた魔法

26日に倉吉エンカレッジの会の定例会に初めて参加した。
4人グループで、ケアミーティングの手法を使ったワークをした。
私が事例提供者となって、エピソードを聞いてもらったのだが、
たいへん勇気づけていただいてありがたく、
また、ワークで考えたプランがたいへん有効だったので、その効果を報告したい。


エピソードは、例に漏れず5歳の長男と私のやりとり。
屋内の子どもの遊び場に遊びに行っていた日のこと、
長男が見知らぬ子ども2人と追いかけっこをしていた。
どうやら戦いごっこをしているらしく、相手の1人は剣らしき棒で長男を叩いている。
長男はもう1人の男の子をつかんだり、叩いたりしている様で、
なんだか激しい戦いのようだ。
その子たちの知り合いの女性が私のところへ「叩くのをやめさせてください」と言いに来た。
その子たちのお母さんの話ならまだわかるんだけど、とか思いながらも
「こうすけ、1階に行っておやつ食べよう」と長男に声をかけた私。
長男は顔は真っ赤で汗だく、目はつり上がって、口はへの字で、完全にブチギレていた。
こんなブチギレ長男を見るのは、11月頃に家のドアを蹴りたおしていた頃以来だ。
長男は黙って私についてその場を離れようとするが、
また戦いは始まってしまい、子どもたちは走っていってしまった・・・。
困ったなあと思っていたら、その子たちのお母さんが「すみません、うちの子激しくって・・・」と来られたので
「いえ、こちらこそ、激しくてすみません」と言った。
お母さんご自身は子どもたちの戦いをあまり気にしていない様子なのでほっとした。
だって子どもの課題ですから・・・。
とはいえ、長男があれだけしつこく追いかけ回しているのも珍しい。
「こうすけ、1階に行こうよ」ともう一度うながすと、長男は黙ってついてきた。

1階のテーブル席に着いて、長男の座っているすぐ隣に私は腰を下ろした。
すると長男は、ひじで私をグイグイと押した。
相変わらず真っ赤に怒っている顔をしている。
私 「・・・あの子、知り合い?」
長男「ううん、知らない子。ぼく、カンカンに怒ってるんだ!」
私 「それは、誰に対して怒っているの?お母さん?」
長男「ううん、あの子。ぼくあの子嫌い。」
私 「そうなんだ。・・・おやつ食べた後、また2階に行ったらあの子に会うと思うけど、どうする?」
長男「え、叩く!だってぼくカンカンなんだもん!」
私 「うーん、・・・そうしたら、あなたの問題は解決するんですか?」
長男「・・・解決しない。」
私 「そっかあ。どうしたらいいだろうね。」
長男「・・・」
私 「あ、こうすけマーカー持ってきてたよね。折り紙の部屋に行くのはどう?」
長男「あ、そうだった!うん、塗り絵しよう!そしたら会わないですむもんね!」
長男の顔はぱあっと笑顔になって、穏やかになった。
それから長男はごきげんで折り紙の部屋に行った。


1階に降りてからの私と長男の会話に焦点を当てた。
支援対象者は長男で、
書記の方にエピソードを書き取ってもらい、長男の表情や服装などのイラストも書き込んでもらった。
長男はどんな子なのかを他のメンバーさんにもイメージしてもらえるように、色々と描写していった。
それからこのエピソードにタイトルをつけた。悩んだ末、「ぼく、カンカン!!」に決定。
次に長男の良いところと、(長男を取り巻く)環境の良いところを、付せんに書いた。
みんなで良いところを出し合って、関連するものどうしを集めて付せんを貼り付けていった。

長男のストレンクス
・元気!
・知らない子とも体をぶつけ合って遊べる。
・「怒っている」と冷静に自分をみている。
・自分の気持ちを言葉で母に説明できる。
・予測をして考えられる。賢い。
・母の話をよく聞ける。
・気持ちの切り替えが早い。
・好きなことがある。

私のストレンクス
・長男の話を聞いている。
・長男の側にいる。
・パセージを実践している。

などなど、たいへん嬉しい言葉をいただいた。
事例提供者になると、いつも長男や私のいいところを言ってもらえるので
とっても嬉しい(^^)

さて、このワークではここからが山場で、長男のなりたい理想像を描くという作業があった。
色々と話し合う中で、
長男はみんなで楽しく、何かを作り出すのが好きなのかな、という方向にまとまり、
「プロジェクトチームリーダー〜楽しいものを楽しく作ろう〜」という「キラキラ」が出てきた。
このリーダーは他のグループが何をしていてもあまり気にせずに、
自分の好きなことをメンバーにも楽しんでもらうことが大切みたい。
そして、自分が発案者、決定者のリーダーでなければならないみたい。
リーダーという役割と決めなくてもよいのでは、という意見もあったけれど、
いやいや長男はリーダーがやりたいんですよ、ということに私は気づいたのだった。

最後に、長男がこのキラキラに向かうために、私が具体的にできることは何か、というプランを決めた。
いつ: いつでも
誰が: 私が
何を: 「こうすけ、これはどうしたらいいかな?」と尋ねてみる。
プラン名: リーダー、これはどうでしょう?


ベテランアドレリアンさんのナイスアシストなどがあって、
かなりアクロバティックにうまくいったケースだとは思うけれど、
具体的なプランを考えるのはなかなかいいなと思った。





帰宅直後から、私はさっそく「リーダー、これはどうでしょう?」作戦を実行した。
私が帰宅して興奮して、なかなか食卓に着こうとしない長男。
かわいいなあと思いつつも、これでは食事ができず困ります。
(陰性感情を起こさなくなった私、ずいぶん成長しました・・・(笑))
「ねえねえ、ご飯食べたいんだけど、どうしたらいいかなあ?」
「あ、そうですね、じゃあ、ぼくがお味噌汁入れるよ!」
「わあ助かる!ありがとう!」

お風呂になかなか入ろうとしない長男。
「どうしたらお風呂に入れるのかな?」
「あと2回ボールを投げたら、パジャマを出して、入りま〜す!」

工作した後の段ボールやガムテープが床に散らばっている
「お部屋をきれいにしたいんだけど、どうしよう?」
「ご飯の後で片付けま〜す!」

こんなにうまくいっていいのか?!というほど、今のところかなりの効果がある。
ポイントは陰性感情を込めないこと・・・当たり前だけど。
長男は何を言い出すかな?とわくわくして尋ねているので、
長男は、私が自分に関心をもっているんだと強く感じてくれているようだ。
そしてやはりお兄ちゃん、相談されるのは嬉しいようす。
別に何でもないことでも、これまでのように私が決めるんじゃなくて、とりあえず長男におうかがいをしてみる。
そのうち「お母さんがご自分でお願いします」と言うようになるかもしれないけれど、
今はこのやり方で、彼のリーダーをしたいという気持ちが満たされているようだ。
数日このプランを続けてみて、私がリーダーを無意識的にやってきたということがはっきりわかった。
だからリーダーをめぐっての争いが、私と長男の間には密かにあったのかもしれない。
リーダーとフォロワーは横の関係。
私は一生懸命にこうすけリーダーを支えていこうと決めた。


工作ができたから見て!と呼ばれた私。
「しゅんすけが今お母さんの足の上でぐっすり寝てるから、今そっちに行けないんだけどどうしよう?」
「・・・ほんとだ、しゅんすけ寝てるね(^^)じゃあ、後で来てね!」
「うん、後で行くね、ごめんね。」
「・・・あのね、やっぱり持ってきた。ほらこれ見て!ウミガメ作ったよ!」
うん、いいアイディアがどんどん出てくるね。


今まで「お願い〜して」って言っていたのが、全部「どうしよう?」に変わっただけなのに、
私は、いつも長男の仲間だと思えるようになって、いつも長男の力になろうと思えるようになった。
一番いい答えは長男が知っていると、彼を信頼するようになった。
そして彼に対して、私の思うとおりのいい子になってもらいたいって思わないようになった。
だって彼は、私が思う以上に物事をよくわかっていて、いい子だから。
・・・これはいったい何なんだろう?
あのエピソードから、私の力では「彼はリーダーをしたい」ということは導き出せないように思う。
あのときかかったのは、いったいどんな魔法だったんだろう?


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# by Inahoadler | 2016-03-29 01:58 | Comments(4)

試練の日

先日、次男の1歳半検診に行った。
検診の数日前から私は緊張していた。嫌いなのだ。
発達や発育が順調かどうか見ていただけるのはありがたいことだが、
チェックされている、厳しく審査されている気がして、落ち着かないからだ。
子どものことだけでなく、私の母親としての能力や資質を・・・。
気にしすぎと言われればそれまでだけれども。

この日は長男の幼稚園が休みだったので、お願いして長男についてきてもらった。
長男はリュックにぎっしりと絵本をつめて持ってきて、
検診会場に着くともくもくと読み始めた。ありがとう、とても助かるよ!

会場では、1歳半のちいさい子たちがあちこちで泣き叫んでいた。
緊張して固まる次男。
これから身体測定、歯科検診、歯磨き実演、保健士さんとの面談、と
次男にとっては嫌なことがたくさん待ち受けている。
他の子どもたちも、長時間待たされるし、早く帰りたくって泣いているんだろう。



まずは発達検査に呼ばれた。
長机をはさんで保健士さんと向き合う。
「はい、しゅんちゃん、どれがわんわんかな?」と絵を見せてきた。
あいさつもなしで、初対面の人にいきなり指示されて面食らう次男。
「しゅんちゃん、わんわんどれか教えてね。」
次男は私にしがみつき、保健士さんから目をそらして口をへの字に曲げている。
あ、いやなことがあったときにする顔だ・・・。
「あれ?しゅんちゃん、わんわんどれ?教えてちょうだい!」
保健士さん、イライラしてきたようす。
でもこれは保健士さんと次男の関係なので、間に入らずに見ている私。
次男は普段人からこんな支配的に言われることないから嫌なのね。仕方がない。
「じゃあぶっぶーどれかしら?しゅんちゃん!」
意地でも目を合わさないように、保健士さんに背を向けて
全身で「いやだ」と表現する次男。なかなかがんばります。

「じゃあ、先に積み木を積んでもらいましょう。はい、しゅんちゃん、高く積めるかな?」
きれいな色の積み木が出てきて、興味をもった次男。
保健士さんの積んだ積み木の上にそーっと積んだ。
すると、保健士さんが「もっと高く積みましょうね」、と言って
保健士さんが積んでいた積み木を崩して、次男の前に置いた。
次男、えっと、この上に積んでいいのかな?
それともさっきぼくが積んだやつ、崩した方がいいのかな?と迷っているようす。
「はい、高く積んでね。」と保健士さんは言って、次男の前に積み始める。
次男もその上に積み上げた。
「はい、じゃあぶっぶーはどれ?」とまた絵を取り出す保健士さん。
「ぶっぶー」と言う次男。
「しゅんちゃん、わんわんはどれ?」
また顔をそむける次男。

「あー・・・じゃあママに聞いてもらおうかな〜?」
・・・それは私にお願いしているんですか?それなら私に対して話してもらいたいんですが、
と内心陰性感情−3ぐらいになりながらも、
「しゅんすけ、わんわんはどれか教えてくれる?」と次男に尋ねた。
次男は私の顔を見て、絵を見て、また顔をそむけた。
今、バカにしないでよって言われた気がした。
「しゅんすけ、わかってるの知ってるんだけどさ、車はどれか指さしてくれない?」
ちょっとため息をついて、次男は車を指さした。
「はい、じゃあわんわんはどれ?わんわんは?」と保健士さん。
次男はやっと犬の絵を指さした。
「はい、おさかなはどれ?」、「りんごはどれ?」とうながされ、
時間をかけてなんとか指さして、「はい、おくつはどれ?」と聞かれると、
次男は「たった!」と言ってさっき自分のくつを入れた下駄箱を指さした。
「あーはい、まあいいでしょう。」

「どんな言葉をお話しできますか?」
えーっと・・・と詰まってしまった私。
次男とまったく問題なく「会話」しているつもりだったので、
そういえば彼がどんな「言葉」を話しているのかあまり意識していなかった。
私「ぶっぶーとか、わんわん、にゃーにゃ、とか・・・」
保「他にはありませんか?」
私「えーっと・・・トマト」
保「?トマト?」
私「りんごはごーで、小鳥はちゅんちゅん、魚はかーで・・・」
保「魚はかー?」
私「そうです、魚はかーです!」
なぜか陰性感情−4になる私(笑)
保「・・・まあ、3語以上は出てそうですね。2語文はどうですか?」
私「あ、まんま、おいちって、この前言いました。」
保「あ、まんまは言えるんですね。2語文はこれから、と。」
保健士さんの手元の書類には、まんま、とかぶっぶー、とか、幼児語が書いてあって、
しゃべれる言葉に○をつけるようになっていた。
そこにトマトとかちゅんちゅんはなかったので、欄外にメモされていた。

面談が終わってから、次男は
「きゃきゃ(お茶)」とか「(にん)じん」とか「ちーじゅ」、
とか「っぱん」とか、「(ひじ)き!」とか、
もっと多くの食品を言えることも思い出したし、
「だい(す)っき」、「だいじ」とか、「あーとっ(ありがとう)」とか、
心の動きを伴う言葉だって彼は話していることを思い出した。


身体測定と歯科検診の後、かなり長い待ち時間があった。
次男はもうここから逃げたくてたまらないようす。
「あっち、あっち」と、部屋の隅の本棚の近くへ行きたがる。
すると次男は、本棚の後ろ側が非常口になっていて、
その手前に少しスペースがあることに気づいた。
部屋の中の人からは見つからない死角だ。
彼はちょこちょこちょこっと本棚の後ろに隠れて、ほっと一息ついた。
(私は背の低い本棚の上からのぞき込んで一部始終を見ていた)
非常口のガラス戸から外を眺めたり、本棚のすき間から部屋の中の様子を見たり、
ひとりで楽しそうに過ごしている。
ときどき首を突き出して、私が近くにいることを確認する。
ああ次男はほんとうに「安全なところで自由にしたい」人なんだなあと思った。

私と次男がいるべき場所にいないもんだから、
長男は待合の部屋で、次男の名前が呼ばれないかどうか聞きながら
ひとりで本を読んで待っていてくれた。

その後阿鼻叫喚地獄絵図の歯磨き実演も終えて、私と次男はぐったりして帰宅した。


次の日の朝、次男がものすごい泣き声でオムツを換えろ、ご飯ちょうだい、と訴え、
びびる私と夫。
だが様子の変わったところは何もなくて、
前日の検診で子どもたちが泣きわめいていたのを真似しただけだったようだ。
普段の次男は、泣いてうったえたところで、
みんなににこにこと泣き止むのを待たれるだけだから、あまりしつこくは泣かないのだ。
しつこく泣くときは体調の悪いときぐらい。
検診のとき次男は、嫌なことをされているときは泣いていたけど
解放されるとすぐに泣き止んでいた。
確かにずーっと泣いている子とか、泣くことで注目関心を得ようとしている子とか、
いたものね。次男も周りからいろいろ学ぶんだと思った。
だが、相変わらず泣き叫んでも相手にしてもらえない次男は、
その日のうちに大泣きすることをあきらめた。



アドラーの常識は世間の非常識とかいうけれど、
泣いている子にかまって、
子どもに命令口調で指示をして、って、
子どもにとっていいことは何もないような気がした。
長男の方は激しく反抗するタイプで
次男の方はどちらかというと不服従のタイプなのであまり気づかなかったけど、
うちの息子達はどちらも、
競合的な、縦の関係にとっても敏感で
決して意に沿おうとはしないんだということがわかった。
・・・まあ、私もそうなのかもしれないんだけど(^^;;;)

これから学校に行くようになったら苦労するだろう。
でも若いうちの苦労は買ってでもした方がいいと思う私は、
家で彼らを、外で思いっきり戦えるように勇気づけたいと思うのだった。
・・・私も戦い続けるんだろうな。アドラー的でないこの社会と。


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# by Inahoadler | 2016-03-21 02:14 | Comments(0)

勇気づけ

今年の1月から、Adlerjala(アドラージャーラ)という子育てサークルを始めた。
アドラー心理学やパセージをこの地域に浸透させていくため、
やがてはパセージが開けるようになって、
パセージのフォローアップの会になれるように活動中だ。
パセージリーダーさんのFさんのご協力のもと、
今月に入ってからアドラー初心者のメンバーさんも入って来られた。

他のいくつかの子育てサークルに行ってみたときは
どうも気疲れがあるだけで楽しめなかったけど、
でもここはなんか全然違いますね、初めて来たのに不思議とすごく落ち着けます、
と2人の方に言っていただけた。
とても嬉しかった。
ここは、はじめて出会う人たちどうしも仲間だって思えるような場なんだと思えた。
これがゲマインシャフト。アドラーの目指した共同体感覚のある場所なんだ。
それが、アドラー心理学の自助グループの持つ特徴なのだろう。
勇気づけ合う関係が築かれている場なのだろう。

私自身はほぼ野生のアドレリアンというか、門前の小僧というか、
母がアドラー心理学を学び、実践しているのを見聞きして(ときには実験台になった)だけだ。
まだ無資格無免許運転である。
パセージやアドラー心理学を説くことを、許されてはいない。
そんな私を、あれよあれよとその気にさせてくださって、
自助グループ的なグループを立ち上げるように勇気づけてくださったのは
私が受講したパセージリーダーのFさんとRさんである。
そして今のところ大した事故を起こさず、
毎回深い学びのある会にできているのは、パセージ修了者のKさんのおかげである。

一体これはどうなっているのだろうか。
ただ、とてもありがたく感じるのは、私は望まれてここにいる、ということだ。
ものすごく強く、所属している!と感じる。ここは私たちの場所だ、と。
私は、私のしたいことをするのではなくて
私のすべきことをしなければならない。
慎重派の私としては、きちんと勉強をして
パセージリーダーの資格を取ってから自助グループを開きたかったのだが。
しかしこうして新しいメンバーさんにも繰り返し来ていただけて、
このタイミングで開かなければいけなかったのだなあと、
自分のお役目にノーと言わないで従ってみて、よかったと思う。




以前Adlerjalaで私と長男のエピソードをお話したのだが、
( エピソードの内容はこちらをご覧ください↓
 「あやしいにおい」 http://adlerjala.exblog.jp/22602308/ )
今日、長男が、そのエピソードを絵本にしようと言い出した。


少し前に長男は、私が文章を書く用事をたくさんしていることに興味を持ち、
「ねえお母さん、モモちゃんのママみたいに、ぼくとしゅんすけのことお話にして!」
と言ってきた。
モモちゃんのママというのは、彼の愛読書『ちいさいモモちゃん』
を書いた、松谷みよ子さんのことだ。
子どもの頃の私の愛読書でもあったけれど、親になってから読むと、
自分の子どもたちとのやり取り、子どもたちの成長を、
こんな風に童話にできたらどんなに素晴らしいだろうって、私も思っていた。
完全に私と長男の間で、目標の一致が取れた。
「うんできるよ!
 お母さん実は、こうすけとしゅんすけのお話、今も書いてるんだ。」
「ええええほんと?」
「うん。ほら今書いてるのも、実はあなたのことです(笑)」
「え?どれ?・・・わあ、ドラゴンごっこって書いてある〜!!
 じゃあね、お母さん、文章書いてね。ぼくは絵を描くから。
 それで、絵本にしよう!」
文章を書けるという私のストレンクスは、この日のためにあったのねと思えたほど、
私は長男の喜びように勇気づけられたのだった。


そして今日。
「ぼく、今日は絵本描くわ。目次と、絵はぼくが描くから、
 お母さんは空いたところに文章を書いてね。」
「わかりました!」
「第一章は、ガムテープがドロドロになったおはなし です。」
「わあ、あのお話絵本になるんだ!」
「うん♪まずは第一章から描くんだ〜」

しばらくして、長男は本のように貼り合わせた落書き帳の紙を持ってきた。
「見て!これは目次で、第一章の1ページ目は、これ。
 これがストーブで、このストーブの上の黒いのが、ドロドロのガムテープだよ。
 それで2ページ目は、お父さんとストーブの絵だよ。わかる?」
「うわあよくわかるよ!どんなお話を書くの?」
「えっとね、
 『あるひ、おかあさんがねていますと、
  むすこのこうすけが ガムテープをはじいて
  ドロドロになって、 ストーブのうえに のっかっていました。』
 2ページ目は
 『よる、おとうさんがかえってきて
  カッターで ガムテープをきりとってくれました。』」
「すごーーーい!!こうすけ、じゃあ今お母さん、ここに今の文章書いていい?」
「あ、そうだね、じゃあ書いて!」
こうしてこのエピソードは絵本になりました。

「すごいでしょ!え こうすけ ぶん (おかあさん)だね!」
「ううん、えとぶん こうすけ だよ!」
「え、でもお母さんが文章を書いたよ?」
「お母さんは書いただけだもん。文章をつくったのはこうすけだから、
 この絵本はこうすけが全部1人で作ったんだよ。」
「・・・そうなんだ!これ、お父さん帰ってきたらぜったいに見せてね!」

このエピソード、私がもう少しアドラーの修行未熟だったら、
長男を激しく勇気くじきしてしまっただろうものなのだ。
それが、長男にとってはいい思い出に変わっていることが
私には泣けてくるほどありがたいことだ。
そして、夫がまたストーブを使えるようにしてくれたことが
どれだけ長男を勇気づけたのかということにも気づかせてくれた。


このうれしい後日談を、次のAdlerjalaでお話ししたいなあと思っている。
きっとメンバーさんたちは、私と共に喜んでくださるはずだ。


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# by Inahoadler | 2016-03-18 22:47 | Comments(0)