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理想は遙か

お友達数人と遊びに行った帰り際、
アイスクリームの自動販売機を見つけたお友達が、アイスを買ってもらった。
少し遅れて私が着くと、息子以外のお友達は皆アイスを買ってもらうところだった。

アイスを絶対に買わなさそうな私に、涙目で駆け寄る息子。
息子「アイス!」
私 「アイスがどうしたの?」
   慎重にしなければ、息子といい関係でいられなくなるから
   努めて冷静に、優しく言おうと決めた。
   目標は、「優しく、きっぱり」だ。
息子「アイス買ってちょうだい」
   私が買わないとわかっているから、もう既に怒っている様子。
私 「そうか、アイス食べたいんだね。でも、今日はやめておこう。」
息子「えーーーアイス食べたい!」
私 「そうだね。でも、こうすけは今風邪ひいていてお薬も飲んでいるでしょう。
   今日はちょっと寒いし、これから歩いて帰るからお腹冷えて痛くなると困るよ
   今日はアイスやめた方がいいと思う。」
息子「・・・・・・食べたい。」
   うつむいて涙目になっている。
私 「それはわかる。でもやめよう。」

私たちのやり取りをハラハラ見ていたお友達のお母さんが、
「こうちゃん、これみんなで一緒に食べようと思って持ってきたクッキーなんだけど、どう?」
とお菓子を勧めてくれた。
息子はありがとうと言ってお菓子をいただいて、少し笑顔を見せた。
でもこれで収まるわけはなく。

息子「ぼくもアイス食べたい」
私 「そうだね、でも買わないわ。ごめんね。さあ、パン買って帰ろう!
   こうすけの好きなパンお昼に買って帰ろうね。お約束してたでしょ。」
息子「!パン!」 
   大好きなパンが食べられることを思い出して顔が明るくなる。
私 「うん、パン屋さんに行こう♪」
息子「・・・でもアイス食べたいの」
私 「アイスはまたあったかい日にしよう。今日はおうちでパン食べよう。」
息子「・・・(ため息)うん、パン買って。」
   気持ちを切り替えてくれた!良かった!
私 「うん!どんなパンがあるかな〜」

するとお友達のお母さん方が、すかさず
「こうちゃん、えらいねえ!どんなパン食べたか今度お話してね!」
「こうちゃん、パン屋さん行くのいいねえ!美味しいパン買ってもらってね!」
と息子を勇気づけてくれた。
なんてありがたい!
息子はその後すぐに、アイスを食べているお友達にばいばーいとあいさつをして、
パン屋に向かって一緒に歩き始めた。

私 「こうすけ、ありがとう。アイス食べたかったのがまんしてくれて。」
息子「え?ぼくがまんしてないよ。」
   ご機嫌はあまり良くない。まあ当然のことだ。
私 「そんなことないよ、がまんしてるよ。Kくんのお母さんもTくんのお母さんも、
   こうすけががまんしたから偉いなあってびっくりしてたよ。」
息子「ぼくがまんしてないの!だって怒ってるもん。」
私 「そうか怒ってるんだ。でもさっき抑えていたね、ありがとう。」
息子「さっきは抑えれたけど、もうすぐわあって叫び出すんだ!」
   なんだかめちゃくちゃ面白いなあこの子はと思う私。
   私に陰性感情は今のところまったく見あたらない。
私 「そっか。わあって叫んだらなんかいいことあるのかな?
   叫ぶのは自由だけど、でもここ車通るから、気をつけてね。」
息子「・・・いいことあるかどうかはぼく考え中なんだ!ぼくがまんしてないもん!」
   まだいらいらしている様子。
   でも私は、息子がこういうすねた状態でも会話できていることがなんとなく嬉しい
私 「そうなの?アイス食べなかったから、この状態はがまんしているって言うんだけど」
息子「がまんしてない!」
私 「ふーん。まあこうすけがそう思ってるならそれでいいけど。
   でも一般的にはアイスを食べなかった状態はがまんできてるって言うよ。
   それで、それはすごいことだと思うよ。」
息子「すごくないよ、だってぼく怒ってるもん、アイス食べれなくて。」
私 「怒ってるんだ。・・・あれ、アイス食べれなかったっていうのは悲しいんじゃないの?」
息子「怒ってるの!アイス食べれなくて。泣きそうだったし!」
私 「それはやっぱり悲しいんじゃないかなあ」
息子「怒ってるの!」
私 「そうなんだ。」
息子「怒ってるから、がまんしてないの!」
私 「・・・!そうなんだ!」
   息子の理屈がわかって驚いた。

パン屋に着いた瞬間、息子はにこっとして、
「ぼくもう怒るのやーめた!」と宣言した。
それから私たちは楽しくパンを選んで、仲良く家に帰ってパンを食べた。



どうやら息子は、ありがたいことにがまんすることはとてもいいことだと思っていて
それも機嫌の良い状態で、涼しい顔でがまんできることが理想のようだ。
でも今回彼はみんなの前で、怒ったり悲しんだりしていたから、
理想的にがまんすることができず、不本意だったようだ。
アイスが食べられなかったことが嫌だったというよりも、
彼にとっては大人げない反応をした自分の方が嫌だったのかもしれない。
なぜなら、アイスが食べられないことは彼は最初からわかっていたからだ。

みんなが食べていても自分は食べられないというその状況を作り出したのは
ほかでもない私なのだけれど、彼は一度も私のことを責めなかった。
そして理想的ながまんをできなかった自分に対して苛立っていた。
・・・我が息子ながら、めちゃくちゃストイックでかっこいいではないか。
いい男になれよと思う。


by Inahoadler | 2015-11-02 00:07
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